介護保険制度が導入され、介護サービスの提供は、行政による措置から利用者の選択・判断に基づく契約へとかわりました。介護保険を利用している人のなかには、介護保険施設の対応や介護サービスの質について、要望や希望、疑問や不満を抱きながら、職員に対する気がねなどから、人知れず我慢している人も少なくありません。
 介護相談員は、利用者から介護サービスに関する苦情や不満等を聞き、サービス提供者や行政とのあいだに立って、問題解決に向けた手助けをする専門家です。
 問題が小さな芽のうちに、きめ細かな対応をし、さらには新しいサービスの創出を行政に働きかけたり、地域福祉における課題に率先して取り組んでいくのが介護相談員の役目です。利用者、サービス提供者、行政の信頼関係の上に成り立つ介護サービスのあり方は、だれもが健康でいきいきと暮らせる地域づくりの礎となるでしょう。











介護サービスを利用している人の日常には、「食事の味つけが口に合わない」「できるかぎり車いすを使わず自分の足で歩きたい」「ヘルパーさんが時間にルーズだ」など、サービスに関するさまざまな不満が生じることがあります。はじめは小さな問題であっても、忙しそうな施設の職員やケアマネジャーに「こんな些細なことをいってもいいものか」とためらううちに、深刻な事態に発展しないともかぎりません。 介護相談員は、まず介護サービスの利用者から苦情や不満等をよく聞いたのち、それが単なる行き違いや誤解に基づくのか、それとも介護の質に関わるものなのか、あるいは虐待・詐取など犯罪にあたるのかなど、事実確認を経て見きわめます。そのうえで、助言をすることもあれば、施設側と協議したり、または行政機関に報告をするなど、適切な対応策をとることになります。ときには、信頼できる話し相手を得ることで、相談者が安心感を取り戻せる場合もあります。
在宅介護サービス利用者の自宅で相談を受ける相談員。訪問するうちに顔なじみの関係ができてきた。

介護相談員の受け入れを行っている介護保険施設などに、通常1〜2週間に1回程度派遣されています。また、在宅サービスを提供する事業者を通じて利用者の自宅を訪れ、相談を受けることもあります。施設や事業者にとって、利用者のナマの声を聞くことは、自ら提供するサービスの改善点を探る重要な手がかりになります。ですから介護相談員受け入れ施設・事業者は、サービスの質の向上に意欲的であると、見なすこともできるでしょう。


平成14年度介護相談員受け入れ施設用ポスター 平成15年度介護相談員受け入れ事業所用ポスター 介護相談員活動ステッカー


特別養護老人ホームで相談活動をする。相談者がリラックスできる場所を選び、ロビーで行った。

施設の職員やケアマネジャーなどと同様、介護相談員にも「活動上知り得た利用者あるいはその家族の秘密を口外してはならない」という守秘義務があります。万が一、介護相談員がプライバシーを侵害するようなことがあれば、市町村の介護相談員事務局に連絡してみましょう。

介護保険制度では、サービスに関する苦情は、市町村または国民健康保険団体連合会(都道府県ごとに設置)が受けつけ、必要に応じて調査・指導にあたることになっています。ただし、ここで扱われる問題は、なんらかのトラブルが起きた際の事後処理が中心となります。介護相談員の活動目的は、苦情申し立てに至るほど問題が大きくならないうちに、解決を図ることにあるのです。

介護相談員のおもな活動は次のとおりです。

介護相談員の派遣を希望する施設・事業者を、おおむね1〜2週間に1回程度訪問する。
サービスの現状の把握に努める。
施設等の行事に参加する。
利用者の話を聞いて相談に応じる。
問題点を把握したうえで整理をし、解決方法を考え提言する。
事業所の管理者や従業者と意見交換をする。
必要に応じて足りないサービス創出に向けての提言をする。
必要に応じて利用者の自宅を訪問、相談に応じる。
活動状況を事務局に報告する。
事前問題解決が不可能な事柄については事務局を通じて行政へ伝える。
身体拘束等に関する相談や改善策の提言を行う。
 

事務局を交えた会議では活発に意見を交換する。 会報の内容も、この会議で決定する。

介護相談員派遣等事業の実施主体である市町村が「事業の実施にふさわしい人格と熱意をもっていると認めた人で、一定水準以上の養成研修を受けた人」が、介護相談員になることができます。したがって介護相談員になるには、都道府県・市町村もしくは「介護相談・地域づくり連絡会」などの公益団体が実施する養成研修を受ける必要があります。

特定の職歴や資格を求められることはありませんが、高齢者福祉に関する理解と知識を備え、ボランティアマインドをもっていることが前提となります。また、必要な要件として次の点が挙げられます。

 1. 利用者の視点・目線を大切にして、利用者の代弁ができること
 2. 高齢者福祉に対し、情熱と理解があること
 3. 地域住民の信頼性があること
 4. 人脈・ネットワークづくりに意欲的であること
 5. 市民の手で豊かな地域社会をつくりたいと願っていること

一般に第三者評価においては、介護サービスに関する評価基準を定めて評価します。一方、介護相談員の活動は、利用者とサービス提供者、行政の橋渡しを行いながら問題を解決することを目的とします。介護相談員がサービス提供者の評価を行うことはありません。第三者評価が「評価」に重点を置いているとすれば、介護相談員は「問題の解決」に重点を置いているということができるでしょう。

グループホームの第三者評価は、平成14年度から義務づけられています。評価を行うのは、都道府県の審査・選定を受けた評価機関に所属する評価調査員で、グループホームを訪問し、事業者、利用者やその家族の声を聞いて、客観的な視点でサービスの質を判断します。評価調査員と介護相談員の果たす機能は異なりますが、介護サービスの質の改善を目指し、地域の高齢者福祉の向上を図るという大きな目的は共通しています。また、評価調査員の研修と介護相談員養成研修には重複する内容が含まれるため、介護相談員養成研修修了者が評価調査員の研修を受ける場合には、カリキュラムの一部(認知症高齢者および認知症介護に係る理解)について、受講しなくてもよいことになっています。
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